タイの消費税「VAT」の還付請求の方法。そして、税務署に還付金を受け取りに行って来た話。

タイで仕事
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サワディーカップ。タイ在住16年の「たきんにょ」です。

さて今日は、タイでのお仕事関係のお話です。
タイには日本の消費税と同じ間接税で、付加価値税(Value Add Tax)、通称「VAT」と言うものがありますが、支払う必要のないものについては、還付を受ける事ができます。
実際に、私の会社で還付手続きをした時の話をしたいと思います。

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タイの付加価値税(VAT)とは

タイにおける付加価値税(VAT)とは、日本における消費税と同じ間接税で、最終消費者が税金を負担します。物品の購入や飲食代等を支払う際にはVATを支払います。
税率は、国税法典において10%と定められていますが、1997年のアジア通貨危機による景気低迷で暫定的に引き下げられ、それが延長され続けて、2020年8月時点で「7%」となっています。

このタイのVATが日本と大きく違うところは、日本では年1回(原則)の申告となりますが、タイでは毎月税金計算と申告が必要なため、会計事務作業の負担が非常に掛かります。
具体的には、毎月1日~月末でVATの入出金の集計を行い、翌月の15日までに申告書を税務署に申告しなければなりません。
取引のたびに、販売商品や提供サービスの価格、支払うべきVATの額などを詳しく記した「タックス・インボイス」と言う書類を発行しなければならず、それら発行したものと受け取ったものを集計して、その差し引き額を毎月申告し、納付する必要があります。
そのタックス・インボイスには、
①「タックス・インボイス」との明記
②タックス・インボイスを発行する登録事業者の氏名、住所、納税者登録番号(TAX ID番号)
③物品・役務の購入者の氏名、住所、TAX ID番号等の重要記載要件の記載
が必要です。もし、それらの記載に一部でも不備があると無効となってしまいます。
平たく言うと、事務が煩雑で、毎月申告で、日本に比べて非常に面倒と言う事です。

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VATを支払う必要のないもの

VATはタイ国内で消費される物品の販売やサービスの提供について課税されるので、タイ国外で使用する場合は免税となります。
その他、免税となる主なものとしては、下記となります。

a. 主なVATのゼロ税率適用事業
 – 物品の輸出
 – 外国において、完全に使用されるサービスの提供
 – 法人として設立された事業者が行う航空機または船舶による国際輸送
 – 関税法に従う保税倉庫間または輸出加工区間の、事業者間の物品やサービスの提供
b. 主なVATの特別免除適用事業
 – 年間売り上げが180万バーツ以下の事業者
 – 農産品、畜産品および肥料・飼料などの農業関連物品の販売および輸入
 – 新聞・雑誌・テキスト等出版物および書籍類の販売および輸入
 – 法令で認められた専門職サービス(例えば、医療・健康管理サービス、会計監査、弁護士業務・法務サービス、国税局長が定めるその他の専門職業務サービス)
 – 国税局長により指定された芸術的・文化的・宗教的な諸サービス(アマチュアスポーツ、ライブラリー、博物館、動物園など)
 – 公立・私立学校やその他の教育機関により提供される教育サービス
 – タイ国工業団地法(IEAT)に基づき、輸入関税が免除されている商品
 – 関税局の管理下にあり、輸入時に徴収された関税を還付する旨の政府の約定があり、原産地国への再輸出を目的とする輸入商品
 – 宗教的、慈善活動的なサービス、政府機関や地方機関によるサービス

出典:ジェトロ

私の会社では、タイで生産した製品を、日本に輸出する金額の比率が高く、タイの仕入先にはVAT7%を支払って購入するものの、日本に対してはVAT0%なので、仕入時のVATは返してもらえるとの事になります。

その他、身近なところでは、個人旅行者が、観光の際にタイで購入した物品で課税されたVATは、一定条件でタイ出国時に払い戻しが受けられます。

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企業活動でのVAT還付請求方法

企業活動の中で、VATが過払いとなった場合には、その金額を還付請求するか、翌月以降に繰り越して将来の売上VATから控除するかを選択することができます
通常は、翌月繰り越しにする事が多いのですが、私の会社では、過払い分が貯まる一方なので、思い切って、還付請求をする事にしました。
思い切って」と言うのは、還付請求をすると、もれなく税務調査が入るとの事があり、その対応にパワーが必要となるからです。
タイでは日本と比較して税務調査官の裁量権限が強く、タイの税務調査は企業の悩みの種になっており、一切の追徴税額を課されることなく終了することは非常に困難と言われています。ですので、「思い切って」の覚悟が必要になるのです。

具体的なVAT還付請求手続きの方法です。実は非常にシンプルで簡単です。
毎月、VAT処理の為に作成する書類の中で、税務署指定の申告書(P.P.30様式)と言うものがあるのですが、その中の項目で、還付請求をするのか、翌月以降への繰り越しかを選択する箇所があります。そこで還付請求する」にチェックを入れるだけです。

今回、3百数十万THBも貯まっていた金額に対し、還付請求する事にしました。

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VAT還付請求後の税務調査

税務署の調査方法は、大きく分けて3段階で実施されるそうです。
その前提として、対象期間の税務資料(原本)を全て、税務署に提出します。今まで溜めていた期間は1年半分くらいあり、段ボール箱で3箱ほど、税務署に持って行きました。

【第1段階】
税務資料が適切に保管され、すべての税務資料や帳票の整合性が取れているかの確認。
もし不整合な部分や不明瞭な部分があれば、税額が大きくなるような修正指導がなされることも多々あります。

【第2段階】
金額の大きい項目の取引が税務上適切に処理されているかの確認。
特に私の会社では、日本輸出の金額が大きいので、その輸出時の税関での通関書類の不備や不整合がないかを、細かく見られていたと思われます。

【第3段階】
会社全体の利益率の推移や製品別の粗利率などから、利益率の低い製品販売に係る原価の損金否認項目の確認。
製品の販売価格が、市場価格と比較して低かったりすると、本来はもっと高く販売できたはずとして、見なし価格を適用されて、その分、所得が多くあったはずだったとして課税されたりする事もあります。

これらの税務署側での作業中において、色々と質問が来て説明を求められたり、追加資料を求められたりする事が頻繁に起こります。その対応には、経験値の高い経理担当者が求められます。対応が不適切であると、その分、追徴課税や、還付額の減額等の不利益を被る事になってしまいます。

また、よくあるケースとしては、逆に長期間、税務署から全く音沙汰がなくなってしまう事があります。問い合わせをしてみても、「今やっている」との事で、のらりくらりと伸ばされ、いつ返還されるのか分からないケースです。きっと、できるだけ返したくないので、先延ばしにしてるのではないか、との邪推もしてしまいます。請求から返還まで、2年以上掛かるケースもザラにあるようです。

よって、税務署との交渉にあたる経理担当者の力量により、返還金額や期間の結果が大きく左右される事になります。
私の会社では、税務署交渉に強い会計事務所に対応を依頼していました。途中の状況報告も頻繁に説明してくれて、非常に頼りになりました。
結果として、期間は1年2ヶ月、金額もほぼ満額で返還される事になりました。
真っ当に事業をして、書類もキッチリと揃えてあり、突っ込みどころが無かったのでしょう。但し、税務署側としては、税務調査をして、何もありませんでしたではメンツも立たないのかと思われ、重箱の隅の隅っこで理由を付けられて、5千THBだけ引かれちゃいましたが、その金額で盾ついても、あとが怖いので、それで手を打つ事にしました。かなり上々の結果で終わったと言えるでしょう。

もしVAT還付請求をするならば、やはり税務署との交渉に慣れた専門家に対応をお願いする事がおすすめです。

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VAT還付金の受け取り

税務調査が完了し、還付金額が確定したので、取りに来て下さいとの通知が来ました。
ようやく終わったかとの思いで、ホッとすると共に、嬉しかったですね。

早速、管轄の税務署に、その通知書を持って向かいます。

別に悪い事してる訳ではないのに、お役所に入るのって、なんか緊張します。

事務所に入ってみれば、私の緊張など知るかと言うほどに、のんびりしてました。。。

そして、返還窓口はこちらとの表示があり、その窓口で必要書類に記載します。
一緒に行った私の会社の総務マネージャーに、書類記載はお任せで、私は最後にサインを何か所かするだけ。

そして、サクッとその場で簡単に小切手をくれました。3百数十万THB(1千数百万円)。紙きれ一枚です。

紙きれ一枚とは言え、高額。緊張します。
そして、その後すぐに銀行へ向かい、入金手続きです。

めでたく、VAT還付金が戻って来て、銀行口座に入金されました。
良かった良かった (^-^) めでたくミッション完了です。

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(おまけ)個人旅行者の物品購入VATの還付方法

企業でのVAT還付は、多くの対応パワーと期間が必要ですが、個人旅行者のVAT還付は、そこまでは面倒じゃありません。(少しは面倒ですが)
その旅行者のVAT還付方法についても、おまけで概要をご紹介しておきます。

①VAT還付の申請条件

VAT REFUND FOR TOURIST」の表示のある店で購入した商品である事。
同日・同一店で購入した商品の総額が2,000バーツ以上である事。
購入した全ての商品の総額(VAT込み)が5,000バーツ以上である事。
購入した商品は、購入後60日以内にタイ出国と共に持ち出す事。

②VAT還付の申請方法

商品購入の際、パスポートを提示し、店員にVAT還付に必要な「VAT還付申請書」を書いてもらいます。

③VAT還付金の還付方法及び手数料

還付を受ける場所は、帰国時のタイの空港となります。
出国審査後(イミグレーション通過後)、「VAT REFUND OFFICE」に、お店で書いてもらった「VAT還付申請書」を提示すれば、税金還付を受けられます。

④還付金の受取方法

10,000バーツ未満の場合
現金(バーツ)、銀行小切手、指定のクレジットカード口座への振込
10,000バーツ以上の場合
銀行小切手、指定のクレジットカード口座への振込

尚、還付金受取には手数料が掛かります。
現金(バーツ)の場合は、還付金額に関係なく100バーツの手数料が掛かります。
銀行小切手の場合は、100バーツの手数料に加え、小切手の作成料や郵送料など、更に約250バーツが掛かります。
指定のクレジットカード口座への振込の場合は、100バーツの手数料に加え、更に約650バーツの振込手数料が掛かります。

尚、上記情報は、税制・政令等の改正に伴い、予告なしに変更される場合もありますので、ご注意下さい。
詳細や不明点があれば、物品購入時に、そのお店で聞いておくと良いでしょう。

と言う訳で、今日は少々お堅い話となってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。コープクンカップ。

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